福山市立動物園飼育員ブログ
「パルマヤブワラビーのボタンちゃん」
テーマ:パルマヤブワラビー 投稿日:2019年12月20日

ボタンが2019年10月29日に亡くなりました。
享年6歳でした。

ボタンはカンガルー病の治療のため、9月中旬から非公開の予備の動物舎で飼育をしていました。

死因は食滞でした。
カンガルー病の治療のために使っていた抗生物質の影響により、消化器官である胃の働きが弱まってしまい食滞に繋がった可能性があると考えています。

ボタンは毎日おこなっていた投薬にも堪えて、エサをたくさん食べてくれていました。
症状も良くなってきていたため、小動物ゾーンの仲間たちのもとへ近々戻すことを考えていたところでした。

カンガルー病とは、カンガルーや小型種のワラビーに一般的に見られる病気であることからこのような名前がついています。(正式には顎放線菌症という病名です)
この病気は、顎の骨が化膿して腫れてしまうことが主な症状です。
病状がひどくなると化膿がひろがり、食べ物を食べることができなくなって亡くなってしまうことがあると言われています。
乾草などの硬いものを食べたときに、刺さったり歯にはさまったりして虫歯や歯茎が化膿したり、展示場の壁などに衝突した際に口腔内にできた傷が化膿することなどが原因とされています。
野生のカンガルーの仲間は主にやわらかい草を食べており、また、体の構造上、非常に傷口が化膿しやすい特徴があることが関係しています。



ボタンは岡山県の池田動物園で2013年7月1日に生まれ、2014年2月13日に来園しました。


亡くなったボーイとの間に、子どものツバキに恵まれました。
ツバキは2017年に沖縄県のネオパークオキナワに移動しています。


2018年の秋には、東京都の大島公園から新しく仲間たちが来園してから彼女たちの暮らすオーストラリアエリアは、ますますにぎやかになりました。


ボタンの病気についての経過説明です。


右顎の骨が化膿して、顎の周辺が腫れてしまったボタン。

福山動物園でのカンガルー病はボタンが初めての症例となりました。
2019年の夏頃に顎が少し腫れていることに気付いたのが始まりでした。
症状に気付いた初期のころは、ボタンを群れからの隔離してしまうとストレスを感じ、エサを食べなくなってしまうのではと思い、群れの仲間たちと一緒に暮らしながら、投薬をおこなっていました。
ですが、他のワラビーたちがいる中での投薬は、私たちが無理をしてしまうとワラビーたちがパニックになってしまうため、私たちの動きが制限されてしまい、順調に投薬というわけにはいきませんでした。
顎がひどく腫れていたことがあったため、麻酔下で検査をし、顎の膿を摘出する処置を複数回おこないましたが、顎の腫れは残念ながら繰り返し生じました。
2019年の9月中頃にはボタンを群れから隔離して非公開の予備の動物舎で飼育をしながら、確実に投薬をおこなう日々がはじまりました。
初期の頃から、隔離して確実に投薬ができていれば違う結果になっていたかもしれないと思うと、残念で申し訳ない気持ちです。


カンガルー病は、予防と早期発見が重要です。
今後、他のワラビーたちが発症してしまう可能性は少なからずあります。
発症した場合は、早急に隔離して投薬をおこない、病状を止めることを目指します。
また、注射を用いて投薬をおこなうことを想定して、ワラビーたちに触ることができるよう、日頃からの触ることへの馴致をしていかなくてはなりません。
カンガルー病の克服が、ワラビーを飼育する私たち飼育担当の今後の課題です。


どこかで日向ぼっこをしながらお昼寝をして、以前一緒に暮らしていたボーイくんとの再会を願います。


ご報告が遅くなってしまい、申し訳ありません。
ボタンのことをかわいがってくださった多くのみなさまに感謝いたします。

小動物担当一同

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