福山市立動物園飼育員ブログ
『今日のふくちゃん 28』 ~体調不良の経緯~
テーマ:ボルネオゾウ 投稿日:2016年10月20日
9月24日以来、「今日のふくちゃんシリーズ」を更新できておりませんでした。
それまでの間、「ふくちゃん」は体調を崩してしまい、治療等を優先していましたので、更新できませんでした。すいません。
 
9月下旬、「ふくちゃん」はエサを徐々に残すようになり、耳から採血をした結果、軽い脱水と肝機能の軽い低下がみられたので、お尻から輸液(人でいうところの点滴)をして経過をみることにしました。
また、お腹もほんの少し膨れているようにみえたので、疝痛(便秘やガスだまりなどの腹痛)かな?と思い、展示場の中を歩かせて、腸の動きを促す試みもしました。

その甲斐あってか、一時少しだけ症状の改善がみられたのですが、
10月に入る頃には、再度ほとんどエサを食べなくなってしまいました。
お腹もパンパンになっていきました。

(お腹にガスがたまっている状態)

お腹の中で発酵してガスが発生するようなエサや、異物という異物を食べていないのに、お腹にガスはたまっていき、オナラも出ません。
糞も出ていなかったため、輸液もかねて、数十リットルもの液体をお尻に入れましたが(浣腸)、水分は吸収され、糞は思うように出ませんでした。
この頃、肝臓の状態と脱水が悪化していて、以前から治療で投与し続けていた抗結核薬の副作用の可能性も考えられたので、投与し続けなければいけない抗結核薬の投与を断念しました。
(薬の投与をやめても、すぐには発症しないですが、完治するわけでもないです)
副作用もすぐに消えるわけではありません。
早く治れ!!と思いながらも待たなければいけない! そんな状況がとても歯痒かったです。
 
約1週間、「ふくちゃん」はほとんどエサを食べず、ダルそうな目をして、腹痛にたえていました。
輸液、ガスを抜く薬、痛み止め(筋肉注射)も打ちながら、症状が改善するのを待ち望んでいましたが、昼間や夕方に部屋の中で横になって寝ようとする、いつもしない行動が見られはじめ、忍耐力のある「ふくちゃん」でも、そろそろ危ないなと思っていました。
(ゾウは横になって起きられなくなると、重い体重のせいでかなりの負荷が内臓にかかり、死んでしまいます)

多くの職員、関係者が不安をいだいて迎えた翌日、
「ふくちゃん」は頑張って立っていました。
観察をしていると、尻尾が上がったので、おならが出るのか?と思い近づくと、かなりクサい下痢便が私の目の前に流れ落ちていきました。

人生で初めてかもしれません
朝からフンを体に浴びて喜んだことは
 
そして、おならも出ました!
クサいけど、クサく感じないくらいうれしかったです。

その日、少しずつお腹がへっこんでいき、夜には新鮮なバショウやソルゴー、サトウキビなどのエサ(青刈り飼料)を食べ始めました。

(ガスが抜けた状態)
 
その後、徐々に食べる量も増えていき、良い状態のフンも出るようになりました。
また、脱水や肝臓の状態も改善にむかっていきました。

原因に関しては、
抗結核薬の副作用と考えることができますが、ゾウでの前例が少ない中で治療を実施しており、その他の要因も完全には消えないため、特定することはとても困難です。

しかし、それでも体調が良くなって、本当によかった!!!!

今思うことは、
「ふくちゃん」が治療を受け入れてくれて、頑張って耐えてくれたということ、
治療に関して、他動物園の方々にも協力していただいたこと、
そして、多くに皆さまご支援、ご協力いただいたこと、
本当に、本当に、感謝しております。
ありがとうございました。

今後については、
現在も「ふくちゃん」は頑張ってエサを食べてくれていますので、減ってしまった体重を再度増量させたいと思います。
また、結核の治療も治療方法を検討しつつ再開する予定です。
 

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